真空管とは


名前の通り内部が真空状態になったガラスや金属の容器(管)の中に、プレート・グリッド・カソードと呼ばれる電極と
ヒーター(カソードを持たず、ヒーターがカソードの代わりとして電極となる球もあり)が封入されたもので、電気の流れを制御したり、
ラジオ電波や音声信号などを増幅したりするための電子パーツのことです。
電極の数や構造で2極管、3極管、4極管、5極管(ビーム管)などがあり、詳しく書き始めるとそれだけで本ができる位になります。
ここでは、真空管の構造と働きを簡単に説明することにして、基本である3極管を取り上げます。



<3極真空管の例 6CK4>


傍熱三極管


<真空管の構造>


三極管構造説明図1 三極管構造説明図2
三極管構造写真1 三極管構造写真2

上の図のように、プレート・グリッド・カソードの3つの電極が存在するので、3極管と言います。
また、この例の場合、ヒーターはカソードを温めるためだけのものなので数のカウントには含めません。



<真空管の電気的な働き>


プレートにプラスの電気を、カソードにマイナスの電気を接続した状態で、真空の中でヒーターに電気を流してカソードを温めると、
カソードからマイナスの電荷を持つ電子(自由電子)が放出されるようになります。
この時、飛び出した電子は必然的にプラスの電位を持つプレートに吸い寄せられるようになります。つまり、カソードからプレートに
向かって電子の流れができて、結果的にプラスからマイナスに向かって電流が流れることになります。
(電子の流れと実際の電流の流れは逆向きであることは、中学校の理科で習ったはず…)
ただし、このままだと単にプレートからカソードに電流が流れただけで、何の意味も持ちません。(注1)
そこでプレートとカソードの間に、グリッドと呼ばれる格子状の電極を設けて、それにもカソードと同じくマイナスの電位を与えるように
します。
そうすると、カソードから飛び出した電子が同じマイナス電位のグリッドに阻まれてプレートに届きにくくなります。
(プレートからカソードへの電流の流れが減ります。)
この時、グリッドのマイナス電位を上下させる(直流に交流を重ね合わせることで実現します)ことで、それに合わせてプレートから
カソードへの電流の流れが多くなったり少なくなったりします。
つまり、音楽信号に合わせてグリッドの電圧を上下させると、それに合わせてプレートとカソードの間に流れる電流が大きくなったり
小さくなったりします。これが、真空管の増幅の原理になります。
(実際の真空管アンプでは、プレートとカソードの間には大きな電流を流せる様に元の音楽信号とは別の電気を予め用意しています。)

ところで、音楽信号でどうすればグリッド電圧を上げたり下げたりできるのでしょうか?
実は、音楽信号は交流です。
(音は空気の粗密で伝わりますよね。それを電気信号にすると、プラスとマイナスが入れ替わる交流信号になるのです。)
最初に何も音が鳴っていない状態で、グリッドにあらかじめマイナスの電圧をかけておきます。(これを専門用語で「バイアス」と言います。)
そこに交流の音楽信号を重ね合わせると、グリッドに元々かけていたマイナスの電圧が増えたり減ったりします。
結果、グリッドにかけた交流信号と全く同じ形で、より大きな電流がプレートとカソード間に流れることになります。


バイアス説明図

注1:実は、意味を持たないわけではなく、この状態はプレートとカソードに直流ではなく交流をかけることで、プレート側が+、
   カソード側が-になったときにのみ電流が流れる様になります。すなわち、交流から直流への整流作用を持つことになり、
   整流管として立派に存在しています。